
ゼラチンシルバー写真: 銀塩写真。感光材料が塗られたフィルムを露光させる方式で撮影した写真のこと。
対岸に住む美しい女を、ビデオカメラで24時間監視する男。依頼主の目的がわからないままひたすらビデオを回す男は、いつしか言葉も交わしたことのない女に魅かれるようになる。女は出かける前に必ずゆで卵を一個食べる、まるで何かの儀式のように。
人が死ぬ現場にたたずむ女に遭遇する男。ある日女は男の前に現れて、自分は暗殺者だと言う。「わたしは美しいものが好き、例えば人の死ぬ瞬間の顔とか」
男はテレビ画面に映した女を狂ったように、ゼラチンシルバーフィルムで撮り始める。触れられないからこその執着をもって。自分が美しいと思ったものにだけ感光する男の心に、女の姿は救いがたく焼き付けられた・・・
「見るということの中には必ずサディズムがある」と言ったのは誰だったか、でもこの場合はマゾヒズムでしょう。ふたつは表裏一体とも言われますね。
浮世離れした設定を支えているのは、暗殺者を演じる宮沢りえの絶対に手が届かない高嶺の花感と、撮る男を演じる永瀬正敏の黙っていても滲み出るセクシーフェロモン。脇(というには豪華すぎる)を固める役所広司、天海祐希も大人の魅力で、映画の世界観を一層揺るぎないものにしています。
繰上和美監督は、著名人のポートレートを数多く手がける写真家。これが初の映画作品ながら、人物を撮ることへの美学が存分に生かされた映像が見る人を惹き付けてやみません。
KAVCでは6月公開。もう少々お待ちください!
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